ERS-110
これは1999年、ソニーが販売したイヌ型ロボットで
初代AIBO (ERS-110) と申します。
先ほどC棟の倉庫を整理していた際に発掘いたしました。
元箱、取説、その他のアクセサリーを含め全て新品同様です。
当時、誰もが驚いたこの製品の予約はネットでのみ行われ
価格は25万円と高額であるにもかかわらず
受付開始後わずか17分で限定3000体が完売してしまうほどの人気でした。
運よく手に入れることができた私は初めて経験する
この動物を模倣した“動く物”に夢中になりました。
頭部のカメラで物を認識し、反応し、学習し、進歩していく様は
なるほど確かに生き物のように見えました。
ピンク色のボールを追いかけ、頭を撫でると喜び、
転んでも自分で立ち上がりました。
なんかすごくかわいい~。
しかし興味は長続きしませんでした。
幼少のころから本物の生き物たちと濃厚に接してきた私にとって
これはやはり、なんというか、やはりそうですね、そうなんです。
違和感が発生し、それは異物感に変わり、やがて嫌悪感を持つようになりました。
“生きようとする欲望”を持っていないメカが
生き物の行動を真似ているわけですから虚しくなっちゃったのかも。
エンタテイメントに徹するあまり本物のイヌよりも騒々しい、しかも無意味に煩い。
「これはイヌのカタチをしたパソコンである」と結論しました。
で、早々にお蔵入りになってしまったわけです。
素晴らしい発想と日本の技術の結晶、とも言える画期的な商品ではあります。
そして忘却の丘の彼方から十五年の歳月を経て今ここに再会。
本物のイヌならばヨボヨボになっているか
運が悪ければこの世に存在していないくらい長い時間が過ぎましたが
箱に入って保存されていたロボットですからピカピカです。
これを見つめているうちにあることを思いました。
このAIBOは二代目ドーベルマンのビオラちゃんのことを知っているんだよな、
電子頭脳の記憶はあの時のままなんだよな、と。
当時が無性に懐かしくなり、だからどうなるというわけでもありませんが
ここに自律機能搭載・イヌ型ロボットの再起動を決定したわけであります。
でも、動きませんでした。
悲しい、なんだか無性に悲しい、機械が動かなくなっただけなのに何故。
ああそうか、イヌのカタチをしているからなんですね。
イヌはかわいいからイヌのロボットもかわいいんだ。
なんか、わけわかんない、複雑な気持ちですよ。
シルバーのエンジニアリングプラスチックの身体は今も沈黙したままです。
ボディは消耗が無く、メカニカル部分の劣化はありませんから
たぶんリチウムイオン・バッテリーが経年変化でダメになっているのでしょう。
交換部品はもうとっくの昔に無いらしいのでお手上げですね。
いや、まてよ。
メインバッテリーパックそのものを分解して
内部のセルを新品に改造交換すれば・・・。
本体の深層部分に存在すると思われる
もう一つのメモリー用のボタン電池が腐っていたらアウトですが、
これはやってみる価値があります。
いっちょ、仕事の合間に作業してみようかな。