過去から来た未来
これはバブル期が終焉を迎えるころに
小西六(コニカ)が開発&販売した
アイボーグという名の写真機です。
ルイジ・コラーニ風を飛び越えて
まるでハンス・ルドルフ・ギーガーの
彫刻のような有機的すぎる曲面ボディは
グロテスクでさえあります。
ラメラメに光輝く塗装も
アメリカSF映画の異星人を連想させますし
自動で開閉する瞼のようなレンズカバーや
複雑に点滅するトップカバーの連装LEDなど
空想科学的な数々のギミックも満載です。
皆が確信していた夢の未来生活を
先取りして具現化したような意匠ですね。
内容的にも無駄すぎると思えるほどの
オーバースペックな機能満載で
当時の技術をこれでもかというくらい
注ぎ込んでいますから
説明書を熟読しないと
普通に使うことすらできません。
こんなバケモノじみた製品を
自信満々に市場に投入するほど
当時のエンジニアたちやメーカーは
未来を信じていたわけです。
二度と来ないであろう
日本の熱狂的な時代の
遺物と言えましょう。
当時はワンレン&ボティコンの女性たちが
お立ち台の上でバンバン腰を振りながら
踊り狂い、男たちは頑張って働き、
田舎道を真っ白いロールスロイスが疾走し、
それを憧れの目で眺める若者たちは
将来の夢に胸をときめかせながら
必死になって勉学に励んでいました。
それが良いことだったかどうかは
よく判りませんが
少なくとも皆が妙にシラけてしまった
今よりも刺激的でワクワクするような
毎日だったのは確かです。