哀しい花
これはアガベーという植物です。
大変に生命力が強く、暑くて乾燥した土地に適応しています。
ちなにみに哲学において
“奪う愛”をエロス、“与える愛”をアガペーと言いますが
これはアガペーではなくアガベーです。
一般的にはリュウゼツランの一種と言った方がわかりやすいかもしれませんね。
長年にわたり大切に育てていたところ、異変が。
中心部から何かが顔をのぞかせ始めました。
どうやら花芽のようです。
本来はこの一族はめったなことでは開花しません。
過酷な環境の現地では数十年~百年に一度しか花を咲かせないため
“センチュリープランツ”とも呼ばれています。
強固で長い茎がどんどん伸びていきます。
緑色の小さな玉がたくさんついていますが
これがこの植物の花の蕾です。
まれであり、風変りであり、異様にさえ見えます。
さて、ここでタイトルにある「哀しい花」の説明をしなければなりません。
普通ならば誰もが喜ぶであろう開花、
実はこの植物にとっては最後の時が訪れたことを示しているのです。
そうです、花が終わったらこの子は死にます。
蕾は根元から先端に向かって開いていきます。
それと同時に本体は徐々に元気を失っていきます。
長い間大切にしていたアガベーなので、
その変化を毎日見続けるのはつらいですね。
生まれて、生きて、死んでいく、
それは全ての生命体の定めであり自然界の理なのですが
植物に限らず、いつも隣にいた相手が
いなくなってしまうのは辛く、悲しく、さびしいことです。
“当たり前のようにいた”のではなく、“特別にいてくれた”のですね。
それに気が付いたときは後悔しか残りません。
もっといっぱい見つめていればよかった、
もっともっと大切にしてあげればよかった。
せつない感じになってしまいましたが
しょうがないものはしょうがない。
この世に存在する全ては始まりがあって終わりがあるものです。
でも、実はそれだけではありません、
希望だってあるんです。
はっと思い出しました。
これは以前、何気なく株分けしておいた赤ちゃんのアガベー。
あまりかまっていなかったのに風ランたちに混じってちゃんと育っていました。
この子が大きくなって哀しい花を咲かせ、去っていくのはかなり先のことでしょう。
というわけで再び長い付き合いが始まります。
よかったですね!