真っ赤なサソリ
古くからの友人が
最近手に入れたクルマを
自慢しにやって来ました。
一目見て私が最初に発した言葉は
「こいつはすげえ!」でした。
トレードマークのサソリのエンブレムが
実に誇らしげなこのクルマは
“アバルト750”という60年代の名車です。
平均的な家屋一軒分に相当する費用と
五年の歳月をかけて
イタリア本国にてフルレストアしたといいます。
どうりでクルマが生きているわけです。
筋金入りのエンスーですね!
このアバルト750、
見た目的にはかわいらしく小柄ですが
本気になれば現代のフニャチンみたいなクルマなんか
一瞬で蹴散らす韋駄天ぶりを発揮します。
何しろ内容的にはスポーツカーというよりも
“レーシングカー”なんです。
しかも血統が抜群ときたもんだ。
よく見てください、
ドアミラーなんかついてませんよ。
常にトップを走りますから後ろは見なくていいんです。
実はシートベルトもヘッドレストもありません。
死を恐れていたら戦えません。
もちろんエアコンなどの快適装備なんか
ひとつもついていません。
これが“漢(をとこ)の戦闘マシーン”
というものです。
大変にすばらしいですね!
かっこいい!
もうドキドキしてしまいます。
女は米を食って生きているが
男は夢を喰って生きている。
著書にそんなことを書きなぐって
男旱(おとこひでり)の続くブスどもの
ブーイングを受けた私が言うのもなんですが
男のロマンというものを理解してやってください。
実は男ってやつは
愛する対象をいくつも持たないと生きていけない
かわいそうな存在なんですよ。
つまりそういうことです。