英霊たち
二万件以上の過酷な手術を
共に戦い抜いた相棒たちの一部を
掲載いたします。
巧みの技を持つ職人が創りし最高級品ですから
修繕を繰り返せば一生使用できるものばかりです。
とは言うものの、
ここまで使い込んでしまうと
もはや限界と言わざるをえません。
しかし、金属疲労で破損して
その役目を終えた彼らを棄てることなど
どうしてできましょうか。
外科担当の私にとって
手術は不退転の決意で望む決戦であり、
守るべき相手に己の命を削って差し出す
行為でもあります。
だから手術器具は
侍にとっての日本刀のようなものであり、
辛い戦いの歴史でもあるわけです。
群がる敵よ何するものぞ。
之(これ)ぞ大和男(やまとおのこ)に生まれし
武士(もののふ)の本懐(ほんかい)也(なり)
皆、よく頑張った。
これより永遠(とわ)の眠りにつくことを命じる。
野村潤一郎