古き好(よ)き時代のメカ
これは1975年に製造された
西独UHER社の
オープンリール・テープ・デッキです。
2トラック・ステレオのヘッドを持ち、
テープの最高速度は19.5cmm/secです。
ボディはアルミダイカストで堅牢無比、
巨大なフライホイールでワウフラッターを
押さえ込む力技のメカを内蔵しています。
当時は放送局などでも
SE(サウンド・エフェクト)の収録に
使用されていた名機なんですよ。
この老兵が現代に存在する理由は
ズバリ言ってその“ダイナミックレンジ”です。
“太い磁気テープ”をガンガン回すことによって
波長が複雑で録音しにくい
動物(特に鳥類、昆虫、蛙)の声が
歪むことなく忠実に記録できるのです。
つまり“現代人がつべこべ言う”よりも
“原始人が棍棒を振り回す”方が
はるかに破壊力があるのと一緒ですね。
して、その実力は…と言いますと
「グレイト!」の一言に尽きます。
これこそがHI-FIである!と思わず唸ってしまう
艶やかさと潤いのある音質なんです。
利便性や効率の追求は
ムダに忙しい今の人類には
大切なことなのかもしれませんが
なんでもかんでも“簡単でそこそこ”だと
人間の中身までもそうなってしまう気がします。
ただ、問題が一つ。
この録音機に使用する
オープンリール・テープは
もうどこのメーカーも
とっくの昔に製造をやめてしまったので
大変に手に入りにくいのです…。