ＦＯＣＡはフランス語読みでは
「フォキャ」と発音します。

５０年以上昔、
ドイツ占領下のフランスで
地下活動的につくられた
フイルムカメラです。

当時最も優れていた
ドイツ製の写真機と
似ているように感じますが
実はアンチドイツ思想の塊のような
構造ですから世界規格として
君臨していたライカとは
全く互換性はありません。

その精悍かつ優雅な佇まいは
不条理な権力に反発する
カッコいい活動家たちのような
インテリジェンスと若々しさ、
不屈の精神力、
そしてひとつまみの育ちの良さを
醸しだしています。

銀色に輝く古く美しい機械を
見つめる者たちの心はいつしか、
蒼いアンジェニューの瞳によって
セルロイドに焼き付けられた
古(いにしえ)のフランス銀幕の
世界へと誘(いざな)われる
ことでしょう。

金属の重みと冷たさを
手の平に感じながら
そっと目を閉じれば
永き時間を生きてきた
ＦＯＣＡの歌を聞くことが
出来るかも知れません。

忘却の丘の彼方から
温かい光に包まれた
幸せな思い出が
日が昇るほどの速度で
近寄って来ると同時に
雲の合間の光の中を
アナログの女神たちが
降臨して来ます。

彼女たちの美しい指先が
次々に貴方の頬を優しくかすめ、
そして再び空に舞い上がって
消えていくのを
夢現(ゆめうつつ)で感じていると
古き良き時代の風に木々がそよぎ、
懐かしい街並みが見えてきます。

それは貴方にとって一番大切な
潤いのある心の景色。

その時、きっと貴方は
小さくつぶやくのです。
屁をたれながら。

コマンタレブ～。


★写真説明
軍艦部に乗っているのは
写角を確認するための
ターレットファインダーです。
注目に値するのは特殊な金具で
取り付けられたＦＯＣＡ純正の
“スネークチェーン”です。
多くの愛好家を悩ませていた
不思議な形のアイレットの謎は
つまりこういうことだったのです。